「とっつぁんの気持ち」 |
「アバヨ!とっつぁん~」
とヘリコプターの縄梯子に掴まりながら悠然と大空へと逃げ去るルパン三世。
それを歯軋りをしながら 「ルパ~ン!」 と叫び声を張り上げる銭形刑事。
裏庭に転がっている捕獲器を見た瞬間、我が目を疑った。
仕掛けた位置からは優に1メートル以上は離れていただろうか。
突っ支えにしていた2個のブロックなど屁の突っ張りにもならなかったようだ。
捕獲器の蓋は閉まっている。
そして中に仕掛けた餌のリンゴと撒き餌のキャラメルコーンは綺麗サッパリと食べられている。
これ等の状況から推測すると、アライグマは一度は捕獲に入ったと言えるだろう。
しかし完全に入り切らなかったと思える。
完全に入っていたとすれば、この捕獲器を壊すなどはほぼ不可能。
歪みはあったものの、壊されてはいない。
蓋も閉まっていた。
恐らく蓋は落ちては来たが、背中辺りで止まったのだろう。
パニックになったアライグマは暴れる君と化し、必死にもがいたのであろう。
仕掛けを置いていた縁側にはコンクリートで埋め込まれていた玉石が数個抉り取られていた。
さぞや奴のもがき様は凄まじかったに違いない。
しかし不思議な事にこれ程の暴れ様であれば、
その物音はかなりのものであったに違いないのだが、全く聞えなかった。
と言うよりも聞こえなかったと言った方が適切かもしれない。
真夜中の事であろうから、寝入っていたのだろう。
それに川の流れの音に消されていたのかもしれない。
悔しい。
本当に悔しい。
しかし、それにしても皮肉である。
考え抜いた末に設置した屋根の上の仕掛けや天井裏の捕獲器には全く知らん振りだったにも拘わらず、
「まぁ、こんなもんかな~」程度にしか思わなかった仕掛けには即座に引っ掛かるとは、、、
ここからが勝負である。
奴は逃げ去ったのか?
それとも塒 (我が家) へと引き返したのか?
銭形のとっつぁんならば、どんな推理をするのだろうか?
裏を画くのか、裏の裏を画くのか。
今夜も眠れそうにない。