「腹巻のお話」

明け方には布団を被らなければ風邪を引きそうになるくらいに寝室の気温が下がる。

だから腹巻は俺にとっての絶対に欠かせない必須のアイテムである。



ここ数年探し続けているのだが、何処を探してもお気に入りが見付からない。

どれを買っても腹が締め付けられる感じがして、寝付けないので、

買っては捨て、買っては捨ての連続で、非常に不経済である。



とは言え、決して値の張る腹巻は買わない。

何時も通りの安物買いである。

確かに高価な物の中には薄手なのに遠赤外線効果があり、

お腹を冷やさないという俺の心を揺さぶるキャッチッチ・コピーの奴もあるが、

外れたときのショックを思うと、腹巻に小一万を出す気が起らない。

だからバスタオルを腹の上に乗せて凌いでいた。

しかしこれは寝返りを打つと外れてしまい、余り役には立たない。



そんな愚痴を嫁に溢すと意外な返事が返って来たではないか。

「それやったら、一遍これを使ってごらん」

と箪笥から一枚のバスタオル風のものを取り出し、「はい」 と手渡された。



見た目は横長のバスタオルであるが、

長さが約６０Cmで、横幅が約１ｍあり、そこにゴムが通してある。

そして両端には３個のパッチン・ボタンが付いている。

着けてみると、それはとてもじゃないが腹巻には見えない。

紛れもなく腰巻スカートである。

然も 「ケロケロ・ケロッピー」 の図柄が描かれているではないか。

恐らく子供が小さな頃に使っていた水遊び用の何かであるのは間違いない。



しかしとてもじゃないが人前には出られない代物である。

事情を知らない他人様から見れば,

「ケロケロ・ケロッピー」 のスカートを穿いた変態爺さんにしか見えないだろう。

そうは言っても、嫌になるほどサイズがピッタリで、然も緩々加減が絶妙と来る。

実に気持ちがいいんですなぁ～。

真夏の必須アイテムになりそうだ。

でもこれは寝室だけの室外不出のシークレットと言うことにしておりますので、

御内密に、、、