「551」 |
孫には申し訳ない話だが、あのポチャポチャ顔を思い出した時、
急に551が食べたくなった。
確か娘と元町の大丸に行っている筈だから、今なら間に合うかもしれない。
何度もコールを繰り返すが、一向に出ない。
時既に遅しで、もう地下鉄に乗って、ハーバーへ向かっているのかもしれない。
只、未だ一縷の望みはある。
俺の好みを知っているから、既に買っているかも知れないのである。
暫くして電話が鳴った。
嫁からだった。
「今何処?」 と訊ねると、少し前にハーバーに着いたという。
551の事を訊ねると、一応並んではみたが、すごい行列だったので孫がぐずり始めたらしく、
結局は諦めたそうだ。
至極残念だが、仕方がない。
元々俺は食べ物には執着しない方なのだが、何故だかは分からんが、
今日は551の方向から逃れられない。
かと言って、今更551を買いに大丸に戻れとは言えない。
もう一度嫁に電話をした。
ハーバーには551とよく似た食材を扱っているお店があるのか
如何かを訊ねたかったからだ。
「餃子の王将」 という返事が戻って来た。
俺の思っている方向とは違う。
今日の俺は 「豚マン」 を食べたいのである。
「じゃ、ええわ」 と断った。
未だ諦めきれずに、パソコンに向き合い、この原稿を書いているのだが、
頭の中は次第次第に整理され、妥協点を探っている。
豚マンを諦めるとすれば、次は何かという事だ。
時間、帰り道のルート、そして俺の今日の拘りというポイントを全て考慮すると、
我が家のご近所の 「餃子の王将」 しかない。
しかし、そこでは豚マンは買わない。
俺の豚マンは551である。
此処では 「ジンギスカン」 である。
要は中華路線であればいい訳である。
また嫁に電話をした。
出るなり 「王将へ行くんやろ」 と先を越されてしまい、絶句。
「うん」 という一言しか出なかった。
まるで手のひらで転がされている様で気分が悪い。
近日中には必ず551をゲットする積りでいる。