「夕暮れ時」 |
カフェーとかいう場所でコーヒーを飲んだのは何年振りだろうか?
昔風に言うならば喫茶店であるが、もう少し開放的な雰囲気である。
娘と孫、そして義母とその娘(嫁)と一緒だったので、テーブルの確保に気を配ったが、
平日だった故、何とかなった。
何時もは事務所で独りきりでのコーヒータイムだが、大勢で飲むコーヒーもいいものだ。
ひと仕事を終え、手持無沙汰となった。
嫁に電話を入れると、これから娘と孫を車に乗せて、
ハーバーランドに出掛けようとしていた矢先だったらしく、
義母は既にハーバーで買い物をしているそうだ。
散歩がてら、久し振りにハーバーへ出向く気になった。
若い夫婦連れやママ友達がバギーを押しながら行き来している姿を、
想像以上に多く見掛けた。
「幼子を連れての買い物は土曜・日曜であると嘸や大変だろうなぁ」
孫を乗せたバギーを売り場の狭い通路で押しながら、そんなことを考えていた。
嫁と娘はこの時とばかりに、孫の用品を買いに来た事等はすっかり忘れ、
自分達の品を物色し回っている。
「男と女の差はこんなところに顕著に出るんだよう」
と、分かる筈もなかろうが、孫に語り掛けた。
目は有らぬ方向を向き、素知らぬ表情だが、
店内に流れるビートの利いたリズムにご満悦の様子だ。
俺も舌打ちでリズムを取った。
事務所のドアには午後5時に帰るとの札を出している。
5時少し前に皆と別れた。
地階のカフェーからエスカレーターで2階へと上り、ビルとビルを繋ぐ陸橋へと出ると、
上空には薄い霞掛かった青色の空が拡がっており、未だ明るさは失っていなかった。
しかしビルの谷間は淡く弱い光を拒絶するがごとく暗い。
その足元を光のイルミネーションが鋭く彩っているのが印象的だった。
午後5時丁度に戻れた。
今、この原稿を書き終えようとしている時刻は午後6時15分。
外は真っ暗である。
西の空に微かにあった茜色はとっくに消え去っている。
この季節の一時間、特に夕暮れ時は劇的な変化をもたらす。
しかし、事務所に籠り、パソコンと向かい合う日々の中ではそんな変化に疎くなる。
矢張り、堪には外に出向くのも悪くはない。
そんな気がした夕暮れ時であった。