「自棄(やけ)」 |
ちょうど去年の今頃だったと思うが、
我が家の前の持ち主のおばちゃんが遣って来て、庭の紅葉の葉っぱを所望された。
勤め先のレストランへ持って行き、盛り付けの飾りに使いたいとの事らしい。
別段断る理由もなかったので、承諾した。
急に冷え込みが厳しくなり、周りの山もカラフルな彩となった。
嘸や我が庭もと思ったが、恐ろしくて見ることが出来ない。
この二年、放ったらかしにしているので、鬱蒼としたジャングル状態となっている筈だ。
さすがにこの状態を放置し、知らん振りを決め込む程の度胸は持ち合わせてはいない。
不承不承ではあるが、先日造園屋さんに手配を頼んだ。
来月中には綺麗に剪定されている事だろう。
今年もおばちゃんが遣って来るかもしれない。
そんな思いで庭の紅葉の色付き具合を見に行ったのだが、
件の紅葉は色付くどころの話ではなかった。
木の幹も枝も序でに茶色く色付いていたではないか。
何のことはない、枯れ果ててしまっていたのである。
早速造園屋さんに訊ねた処、どうやら虫に遣られたようである。
ダイジストンとか云う薬を撒くといいらしいが、今更遅い。
分不相応という言葉があるが、この庭は俺にとってはこの言葉がぴったりと嵌る。
本音を言えば庭などなくったっていい、まだ畑の方がましである、と思っている。
何だか、自棄になっているようだ。
今の俺には花鳥風月が欠ける。
そう思っている。
非常に悔しいが本心である。
少し心がささくれているようだ。
気持ちが刺々しくなっているような気がする。
近い内にホームセンターへ足を運ぼう。ダイジストンを撒いてやろう。
せめてこれくらいが俺のしてやれることであろう。
反省している。