「落ち着き」 |
一区切りを読み終え、枕元に本を戻し、そろそろ眠りに就こうかと、
スタンドライトのスイッチに手を伸ばした時、
カタカタと裏の物置のトタン屋根が軽く軋む音がした。
「この様子からすると中心からは大分外れているようだ」
独りごちながら眠りに就いた。
台風26号は我が家の頭上から遠く離れた南の海上を早足で通り過ぎ、
東へ去って行ったようだが、
直撃された伊豆大島では一日に824mmという記録的な大雨に見舞われ、
多数の犠牲者が出たと朝のテレビニュースで報じていた。
うつらうつらと浅い眠りを繰り返すばかりで、全くシャッキとしない。
やっと起床して台所に行った時には誰もいない。
テレビが独り寂しく台風を報じていた。
そう言えば嫁は早出だと言っていた。
兄ちゃんの東京行きは中止となったようだが、彼もまた早出となったようだ。
呑気に俺は欠伸をしながら、熟・熟この商売でよかったと思うと同時にこの身を恥じた。
話し相手がいないと寂しい。
しかし要らぬ気遣いはしなくていいし、仕事も捗る。
只、これはほんの半日の話。
夜になると気遣いの連続が始まる。
この思考回路は寝不足から来る気鬱である。
この解消法は運動と昼寝であるが、どうもお天気の具合が未だ芳しくない。
天気予報でもにわか雨にご注意と言っていた。
出勤途中には雨が降り出し、出鼻を挫かれた気分に見舞われ、
早々とスロジョギは諦めモード。
寝不足での思考はやはりマイナスへと向かう。
ラジコを聴きながらお昼寝モードへと入る。
どうも俺は静かな昼寝より、何がしかの音が入る、所謂ながらの方がいいみたいだ。
しかし文章を書くとき読むときなどは絶対に音を嫌う。
ほんの15分程度の昼寝だが、頭の中はスッキリ晴れやかとなる。
序でにカフェインでよりスッキリさせようとコーヒーを飲んだが、
何だか口寂しく、おやつにチョコを食べた。
このチョコは熊谷君が持参したものであるが、少しだけ失敬してしまった。
また返して置かねばならない。
空には青空が帰って来たようだ。
午後5時を過ぎた頃であるが、窓越しに見えるビルの西面に陽光が当たり、
その反射光で眩しい。
明日には風も止み、穏やかな秋晴れとなるだろう。
そろそろ気候も落ち着きを取り戻してくれてもいい頃だ。