「保険金」 |
嫁にコンデジを取り上げられてしまった。
孫の写真を撮りまくりたいそうだ。
それはそれでいいのだが、こちらは仕事に使うので、不便極まりない。
「新しいのを買うから、今のカメラを使っていたらええで」
ここがチャンスとばかり、然りげ無く新品購入の宣言をしたが、
「お下がりは要らんから、新しいのを頂戴」 と突っ込まれてしまった。
万事休すだ。
嫁にはイイのは要らぬ。
それは彼女自身も先刻承知のこと。
写ればいいのであるから、一万円迄で間に合いそうである。
昨日の夕方保険屋の玄さんが 「皆んな変わりないか?」
と挨拶がわりの言葉と共に入って来た。
「娘に孫が生まれたわ」 と返事を返したところ、
「そりゃ、おめでとう」
「普通分娩でか?」
「否、切腹や」
「帝王切開か、、、保険出るで」
娘の保険のことなどすっかりと忘れていた。
そう言われてみれば入ったような気もするが、定でない。
玄さんは直ぐに調べてくれた。
2つ入っているそうだ。
「お小遣い程度は出るか?」 と訊ねると
「大した金額ではないけど、無いよりはましやろ」 そんな返答であった。
暫し上を向き、取らぬ狸を計算してみた。
「ぽっぽ内内しようと思うとんねんやろ」
「お前、そんなことしても、バレるで」
「診断書や領収書が要るからな」
俺の胸算用を打ち砕く無慈悲な言葉が返ってきた。
矢っ張り駄目な様である。
昨夜嫁に顛末を洗い浚い話した処、
「それでカメラを買って」
あっけらかんと言われてしまった。
残りは俺の自由かと、口に出掛けたがヤブヘビになるので、思い止まった。
長年俺が支払ってきたのだから、多少の権利はある筈なのだが、場合が場合である。
まぁ、それより娘と孫の無事を願おう。
全てはそこからである。
「いいカメラで、可愛い孫の写真を撮ってやりたい」
そう云う言い訳を考えてみたのだが、、、
誕生年のワインを購入され、成人式に御一緒に乾杯されるというのはいかがでしょう?