「八つ当たり」 |
今朝は洗面所の取り合い合戦となり、噛み合いが悪いというのか、
どうも互のタイミングが合わない。
嫁は美容院へ行くというので、洗髪がしたいという。
兄ちゃんは遅出らしく、暢気に起きてきた。
亭主の事ははどうでも良いらしく、一人蚊帳の外。
結局仕事優先となり、兄ちゃん、嫁という順番に落ち着いた。
それならば「俺が最優先だろう」と言葉が出掛かったが、そこは大人、思い止まった。
こういう時に限って、パソコンの調子が悪い。
イライラしながら、何とかかんとか修復を終え、
取り敢えずメールのチェックは出来たが、
御蔭で梅見の事などすっかり何処かへ置き忘れている。
玄関先に嫁の車に乗り込み、いざ出発という時
「あれっ!コンタクトが片方しか入ってない」
嫁が素っ頓狂な声を張り上げた。
俺には全く理解出来ない事なのだが、
片方の目の調子が悪い時には偶にコンタクトを付けないでいるらしい。
日常生活には差し支えないのであろうが、車の運転には支障を来す。
急遽コンタクトを装着しに戻った。
外の空気はヒンヤリしていたが、日差しはよく、車の中は温室。
結構気持がいい。
ぼんやり目を閉じると睡魔に誘われ、思わずうつらうつら、、、
ドアの開く音で目が覚めた。
ほんの一瞬であったが、目覚めは爽やか、気持がいい。
川沿いの道を暫く走ると、川向こうに山桜の木が目に止まった。
その瞬間「しまった」と舌打ちした。
梅見を思い出したのである。
「どうしたん?」 嫁は訝しげに訊ねたが、
「いや、もうええは、、、」
「明日にでも見てみるわ。梅のことや」
と投げやりに呟いた。
「この前見たときは一つ二つの小さな花が咲きかけていたよ」
嫁は申し訳なさそうな小さな声で返事をした。
「ふ~ん?何時くらいのこと?」
「チョッと前」
「ふ~ん?もう大分咲いたかな?」
「ここらは寒いから、遅れているのと違う」
「ふ~ん?」
どうも噛み合わない。
梅の木が気になって仕様がない。
この一週間は暖かくなると天気予報で言っていた。
それも20度を超す勢いらしいので、一気に開花するかもしれない。
明日はキチッと写真を撮った方が良さそうだ。
暖かくなるのはいいのだが、俺的にはどうも優先順位が違うと思っている。
先ずは懐具合だろう。
それから気温と来るのが順当である筈。
今日は機嫌が悪い。
何かにつけ八つ当たりをしたくなる。
どうも噛み合っていない。