「お久し振り」 2 |
日が暮れるのが早くなった。
ブラインドを開いた窓の外からの光が柔らかく弱い。
午後6時を過ぎた西日の照り返しに眩しさを感じた真夏の頃が妙に懐かしく思えた。
T君がやって来た。
もう2年以上会っていない。
その頃、目の手術を受けると言っていた。
気にはなっていたが、忙しさに感け、様子伺いもしなかった。
手術は上手くいったそうだが、他に異常があり、それで難儀をしているらしい。
病名も分からず、手術も今の医療技術では難しいと医者から宣告され、
病気と付き合って行くしかないと覚悟を決めている。
去年一年は体力も落ち、歩くのも億劫となり、気力も萎えてしまった。
結果60数キロあった体重が48キロまで落ちた。
駅の階段の上り下りも、苦しく、息も絶え絶えとなった。
病院通いも儘ならない。
これではイカンと、一念発起し、朝5時から8000歩のお散歩を始め、
今では階段も苦にはならなくなった。
体力は少し回復した様子であったが、姿は痛々しかった。
身の不義理を悔いた。
50年からの親友である。
ラジコン仲間である。
会えば今でも、話題の中心はラジコン。
昔懐かしい思い出話を飽きずに語り合う。
音楽の話となればブルーグラス。
彼は今でもレコード盤をこよなく愛しているのだが、
先日からオーディオの調子が悪いと頻りに嘆く。
訊くと、どうもピックアップの故障のようだ。
そう伝えると、予備があるので、取り替えてみると笑顔を取り戻した。
若い頃はオーディオの配線や組み換えを苦にした事はなかった。
が、今は違う。
何事も面倒臭くなっている。
体が固く、目も見えない。
狭いところで作業する気力が失くなった。
これではイカンと思ってはいる。
しかし、体が言う事を聞かない。
お互い、そういう話に落ち着く。
帰り際に気が付いた。
彼の腕が程よく日焼けしている。
毎朝のお散歩の効果だろうか。
生っ白い腕よりも日焼けしている腕の方が精気を感じる。
「俺も続けてやるから、お前も続けろよ!」
エレベーターのドアが締まる前に声を掛けた。
お友達の“T君”と次に会った時には、この言葉も進呈しましょう。
『継続は力なり!』