「ふとした出会い」 |
「う~ん」と唸ってしまった。
あのお金は一体なんだったのだろう?
「完全には行きませんでしたが」
とカウンター上に提示された制服を見た瞬間、
絶句した。
出したときの状態と少しも変わっていない。
「プロじゃないな」と心の中で呟いた。
2週間前、嫁さんの貸与された制服を洗濯した。
ポケットに入っていたボールペンを取り出すのを忘れた。
インクが染み出し、5mm大の真っ黒な斑点が上下数ヶ所に残った。
ボールペンのインクの染みですと伝えた。
「出来る限りやってみます」
「ただし、上手く行かないかもしれない事はご承知置き下さい」
と言われ、料金を2千5百円支払った。
染み抜きに関しては全くの素人だが、
受付に問題があると今回は思った。
客からの状況説明を受けた時、
自社の技術者に一報を入れ、
受付可能かの判断を仰げば済む問題だろう。
取次ぎだけのお店にはそういう業務システムが存在しないのだろうか?
クレームは出さなかった。
が、釈然としなかった。
何にせよ、役務を受け付けるのは大変な仕事である。
どの程度の事が出来るのかを勉強しなくてはいけない。
単なるパート仕事で終始していては、
結局従業員自身にも、お店の信用にも宜しくない結果を生む。
二度とそのお店には行かない。
そう思って、店を出た。
気分はよろしくなかった。
表に出て、深呼吸をした。
前から自転車に乗った老人が近づいてきた。
何処かで見た顔だ。
向こうもこちらを見ている。
「久し振りやなぁ~」
とお互い声を掛け合った。
「鶴ちゃんとこからの帰りや」という。
「ええアナゴ、入ったか?」と訊ねた。
「ええ奴ばっかりや」と答える。
「チカちゃん」と呼んでいる。
アナゴ一筋60年の超ベテランである。
選りすぐったものだけを「鶴さん」処へ配達に来る。
顔色もよく元気そうだった。
半年前に奥さんを亡くされたらしい。
チョッピリ、寂しさが顔の表情にでたが、
「また、鶴ちゃんとこで会おう」と笑って別れた。
昔から、チカちゃんと話をするのが好きだった。
魚の事を教えてもらった。
特に、アナゴのことになると目つきが変わる。
俺も彼のようにギター一筋60年と行きたい。
少し、気分がよくなった。
食べたい!!
食べたらもっと気分良くなりますよ!
私にご馳走してくれたら、もーーっと気分良くなりますよ!
精一杯お酌させていただきます^^b