「チョッといい気分」 |
さぁ肉を買って帰ろうかと帰り仕度に取り掛かった時に電話が鳴った。
ディスプレーの着信表示は0764・・・と出ているので、てっきり神戸近辺の町からの電話だろうなぁと思い、受話器をとった。
「マーチンとかギブソンはいいギターなんですよね」
「いい音がするんでしょ」
「でも如何違うんですか?」
こんな調子で一方的に喋り捲って来る年配のおばちゃんの声が飛び込んで来た。
この手の質問は要注意。
答え様によっては非常に誤解を招くから、しつこいくらいの丁寧さが必要だと常々肝に銘じている。
暫くするとおばちゃんの声が突如消え、数秒の間があいた。
電話を切られたのかと思い、受話器から耳を離そうとした時に「もしもし、替わりました」と若い女の人の声が聞えた。
如何やら件のおばちゃんの娘さんらしい。
今持っているギターの音が駄目らしい。
本人もそう思っているそうだ。
おまけにギター教室の先生からも駄目出しの指摘を受けたそうで、早急に新しいギターの購入を検討していると云う事。
先生からのお勧めはマーチン。
そして本人も30~40万円の出費を覚悟し、一生物のギターを手に入れたいと希望している。
半時間くらい電話をしていた。
相手は初心者に近い。
でも結構な理解力もあるし、意欲もありそう。
急がなくてもいいから、先ずは弾き易いギターを選びなさいとアドバイスをして置いた。
そしてヒロのホームページにアクセスして、「Q&A」を読んでみて下さいと言い残し、電話を切った。
そうそう、電話を切る間際に「ところでどちらからのお電話ですか?」と訊ねたところ「富山からです」との返事だった。
地方都市でのギター選びは難しいのだろうなぁと思いつつ、でも何かチョッといい仕事をしたという気分に浸れた。
昨夜はビルから外へ出てもそんなに寒さは感じられなかった。