「一難去ってまた一難」 |
熱も平熱に下がり、隔離から開放され、俺はご機嫌にリンゴ入りヨーグルトを食べていた時の事だ。
「ワァ~、何これっ!」
洗面所辺りから嫁の叫ぶ声がしたと同時にこちらへドカドカと響く足音が近付いて来る。
如何やらそれどころではない事が起きたようだ。
トイレの天井には埋め込み型の蛍光灯が付いている。
何とその蛍光灯本体がぶら下がり状態、然もランプは剥がされ、引っ張り上げられているではないか。
夜中から俺は何度もトイレには行っている。
寝惚けていたのだろうか、そんな事になっているなんて、全く気が付かなかった。
インフルエンザ対策の隔離作戦の為に今俺と嫁は家庭内別居中。
嫁は階上で寝ている。
嫁が言うには夜中の3時頃にガタゴトと何かを引き摺るような音と共にキュウキュウと鳴き声がしたらしい。
ネズミではなさそうである。
最悪、アライグマかもしれない。
義弟に電話を入れて、人の手配を頼んだ。
一番恐れるのは電気配線の事である。
齧られているかもしれないので、ショートする危険性があるからだ。
兎に角見えない所の事であるから素人判断は出来ない。
それにしてもとんでもない事をするものだ。
まさか埋め込み式の電灯が壊されるとは思いも付かなかった。
何の為に遣ったのだろうか?
未だ疑問が解けないのだが、仮説を立ててみた。
1) 先日俺が箒でザァ~ザァ~と蛇が天井裏を這う様な音を立てて追い掛け回した事を根に持って、逆恨みし、復讐の為に遣った。
2) 近頃トイレが近くなったものだから、頻繁にトイレに行く。その際電気を点ける。そして水を流す。奴らはそれが眩しく、煩く感じ、安眠妨害をしたと思い込み、その復讐を企てた。
名探偵張りの見事な推理だと思うが、何せ相手は得体の知れぬ小動物だ、解ろう筈はない。
一難去ってまた一難である。