「野菜の具沢山餃子」 |
「お袋の味は何ですか?」 と訊かれてもピンと来ない。
あると言えばあるし、ないと言えばない。
誕生日の定番としてのカレーライスでもない。
強いて言えば 「水菜のはりはり鍋」 だろうか。
だし汁を甘辛く味付けをし、その中に鯨肉や豚肉を入れ、
一煮立ちした処に水菜をぶち込むという至って単純な料理である。
只、内の場合はもっぱら鯖缶か薄揚げが主役であった。
忙しい両親にとっては簡易な調理で重宝したのだろうが、
子供だった俺には嫌だった思い出しか残っていない。
しかしその時代から半世紀以上経った今では大好物の一つとなっている。
そういう意味では俺にとっての 「お袋の味」 は 「はりはり鍋」 だと言えるのかもしれない。
一昨日の夜は兄ちゃんのリクエストで餃子となった。
嫁が作る 「野菜の具沢山餃子」 である。
キャベツ、水菜、人参、たまねぎ、にら、干し椎茸をみじん切りにするのだが、
決してフード・プロセッサー等でみじん切りにしてはいけない。
切り口が粗くなり、水が出るからである。
だから包丁はよく研いで、切れ味をよくしておかなくてはならないので、結構面倒である。
その点、嫁は見上げたもので、ここら辺りの事はこまめに遣っている。
それにみじん切りが大好きなようで、苦にはならないようだ。
でっかいボウルに山と積まれた野菜に合挽き肉を加え、
塩、胡椒、味噌で下味を整えてから、好みの量のにんにくを摩り下ろす。
そして繋ぎの片栗粉を入れて、よく練り、混ぜる。
ボウル一杯分の具が出来た。
恐らく大判で100個分程度だろうか。
実はここからが一番手間なのだ。
一人で100個は辛い。
俺と兄ちゃんと嫁の三人で包むことにした。
後は一辺が30数センチもある餃子焼き専用の鍋で順次焼いて行くのだが、
嫁は手馴れたものである。
俺と兄ちゃんはビールを飲みながら、焼きたての餃子を頬張っている。
俺と嫁のたれは辛油と酢醤油なのだが、酢は米酢に限る。
醸造酢は酸っぱ過ぎて俺達は苦手である。
兄ちゃんは何も付けずに食べる。
娘も偶に餃子を作るらしいが、嫁のレシピ通りだそうで、婿殿もお気に入りのようらしい。
きっと行く行くは孫の 「お袋の味」 となるだろう。
兄ちゃんの家庭もそうなるに違いない。
今や俺の家の味は 「野菜の具沢山餃子」 であると言える。
押尾さんのお勧めは、具にたっぷり桜海老を入れたものだとラジオで言うてはりました。
で、タレはヒロさんと同じ、辣油と米酢に限ると言うてはりました。
なので、私もそうする事に決めました。酸っぱいの好きだけど(笑)