「酒の顔」 |
全くの二日酔いだ。
如何し様もないくらい気分が悪い。
夜中に何度も目を覚まし、枕元のペットボトルに手を伸ばし水を飲んだ。
その所為で寝不足が重なり余計にしんどい。
寝床から離れることが出来ず、ひたすら茫洋とした世界を彷徨っていたが、
左を向けば胸が苦しい、右を向けば吐き気をもよおす、仰向けになると腰が痛い。
これでは寝床に付いている意味がない。
いっそ起きた方がましな様な気がした。
その時裏の物置のシャッターの開く音が耳に鋭く突き刺さった。
台所によたよたと歩く自分が情けない。
シリンダーグラスに白湯を作り、一気に飲み干した。
弱った胃袋には丁度良かったようで、一瞬スッキリとした気分となったが、
矢張り束の間のことだった。
食欲などは微塵も起きない。
後10分もすれば連ドラが始まるが、そんな気分にはなれない。
嫁に 「おやすみ」 の一言を告げ、再び寝床に入った。
ゴロゴロと寝返りを繰り返すが、相変わらず苦しさからは逃れられない。
それでも目を閉じているだけでも楽であることは確かだ。
どれくらいの時間が経ったのだろうか、裏の畑の方から声が近付いて来る。
如何やら携帯電話での会話らしいが、その声の主はまさしく 「おばちゃん」 である。
大きな声で、然も甲高いので直ぐに分かる。
携帯での井戸端である。
いやはやこれには参った。
一向に会話が終る様子がないのである。
然も正に耳元での会話である。
只、おばちゃんには罪はない。
俺が二日酔いに苦しみ、
窓のアルミサッシ一枚を隔てた寝室で寝転がっているとは知る由もないからだ。
最早これ迄である。
今、事務所でパソコンに向かい合っている。
今日のブログは止しにしようと思ったが、
二日酔いからはほぼ醒めているので、踏み止まった。
流石に今夜は禁酒にする。
そして早寝する積もりだ。
今は酒の顔等、見たくもない。