「母の声」 |
昨日はぴいかんと迄は行かなかったが、
程ほどの好天に恵まれ、母の法要も無事済ます事が出来た。
只、その後が宜しくなかったので、少し気落ちしている。
高速道路を使い、事務所へと急いだ。
自分でも嫌になるくらいの 「事務所戻り症候群」 である。
ここまで来れば立派に病的傾向を示していると言ってもいいのかもしれないが、
その後の出来事により、より嫌になってしまった。
駐車場へ車を留め、
数歩歩き出した時に事務所の鍵を礼服のポケットに忘れている事に気付いた。
礼服はハンガーに掛け、車の後部座席に置いている。
薄暗い上に、礼服は黒色でより見辛い、然も眼鏡を掛けているから、殆んど手探り状態だ。
眼鏡を外し、シャツの胸ポケットに入れ、
礼服のポケットを探ろうとより深く屈み込んだそのときに、
胸ポケットから眼鏡がスルッと滑り落ち、カシャッと乾いた音がした。
「あっ」 と思わず後退りした瞬間、ペキっと鈍い音がした。
眼鏡を踏ん付けてしまったのだ。
幸い粉々にはなっていなかったが、白い一本の筋が入っている。
年老いたと実感した瞬間だった。
頭に血が上り、眼鏡を叩き付けたい衝動に駆られた。
汗も噴き出して来る。
「もう嫌だ」
如何しようもない怒りと悔しさが溢れてくるのが止められない。
衝
動を抑えようと、深呼吸を何度も何度も繰り返し、目を閉じた。
「嫌やったら、止めたらええねんで」
母の声が聞こえたような気がした。
昔の母は 「諦めたらあかん」 と俺を鼓舞し続けてくれたのだが、
今の声はその真逆を言っているではないか。
頭の中では今と昔の母が交錯している状態が暫し続いている。
目を開けると、冷静な自分がいた。
眼鏡をハンカチで拭き、一筋のひび割れをもう一度確認した。
今の時刻ならば眼鏡屋さんは開いている。
早速神戸駅構内にある 「JINS メガネ」 という店に飛び込んだ。
約30分で新しいメガネに換わった。
店員さんの応対も気持ちがよく、気分は落ち着いた。
帰宅後も母の声が忘れられない。
「何故そう言ったんだ」 と、母の言葉への反問を繰り返していた。
ちょこちょこ走っている間も考え続けていたが、分からない。
そして分からないまま眠りに就いていた。
「お前が遣りたい事は何や?」 夢の中に母の声が聞こえた。
「ギター作りや」 と答えた。
「それやったら、そうすればいい」 そう答えてくれた。
「うん」 と肯いた俺が見えた。
ブログは止めないが、不定期にアップする。
そう決めた。
そうでなければ、俺の好きなことが進められない。
今日娘にそんな話しをすると、
「ここを乗り越えなあかんのに、、、」 と頻りに引き止めようとしたが、
俺は返事をしなかった。
残された時間は少ない。