「12月1日のお話」 |
今頃はてんやわんやの大騒ぎも過ぎ、多少の落ち着きを取り戻しているかもしれないな。
そう思いながら、この原稿を書いている。
午後6時丁度だ。
電話をするにはまだ早い。
外はもう真っ暗。
先程まで埼玉のYさんがいた。
ご実家は神戸の北区にあり、我が家とは目と鼻の先。
とは言っても、それは地図を真上から見ての事。
実は険しい山に遮られている。
Yさんは年に2~3回の割で出張がてら来訪される。
彼との付き合いも古い。
しかし今ではすっかり関東の住人となってしまったので、チッと寂しい気がする。
彼との会話は楽しい。
知らない世界の裏話を聴いたり、教えられたりで時を忘れてしまう。
また一度飲みに行こうとお互いに言っているのだが、
彼は何時も突然にやって来るので、中々その機会を作ることが出来ない。
まぁ、楽しみは先に取って置くことにしよう。
今日は娘夫婦の引越しの日。
窓から件のマンションの一部が見える程に事務所とは目と鼻の距離にある。
嫁も朝から駆り出され、嘸や扱き使われ悪戦苦闘しているに違いない。
何時もの事だが、俺は宛にはされていないので助かる。
「仕事や」という逃げ口上があるからだ。
まぁ、例え行ったとしても、あれこれと指図をするばかりで、
重いものを担ごうかという気持ちなどは更々ない。
体力と気力の残存量は最早尽きようとしているのだから仕様があるまい。
何の道、後のお食事代金の付けはこちらに回されるのであるから、チャラであろうが、
こちらから電話をし、様子伺いをするのは止めておく方が無難だろう。
それにしても腹が減って来た。
我慢比べとなるのか、、、
兄ちゃんから電話があり、5日の午後1時以降に須磨警察署へ行き、
車庫証明を上げて来て欲しいとの事だったが、断った。
空き腹だったので、機嫌が悪い。
再び電話口で懇願する。
どうしても仕事の関係で、都合が付かないと言う。
俺は仕事という言葉には弱い。
結局折れた。
「あんたは子供には甘い」とまた嫁に叱られそうだ。
どっちもどっちだと思うのだが、そうしておいた方がうまく収まるなら、
そういう事なのであろうと思っている。
頭の中のブドウ糖が欠乏していくのが分かる。
それ程腹の虫が鳴いている。
どうも負けそうである。