「信金・拘束」 |
パソコンの電源を切り、「さぁ、寝るか」と立ち上がろうとした時、
玄関付近で物音がしたような気がした。
暫し様子を伺ったが、何事もなく、静寂が戻った。
気の所為かと思い立ち上がったその時、電話がけたたましく鳴った。
表示を見ると娘からだ。
「何?」不機嫌剥き出しの声で電話を取った。
「開けて、鍵忘れた!」
どうも玄関口にいるようだ。
その日の昼娘夫婦は事務所へ来た。
引越し手続きで大阪と神戸を行き来し、大忙しだ。
帰り間際に「今日は来いひんねんな」と訊ねると「ふん」と頷いた。
そう思った。
それ故、てっきり家には立ち寄らないと思い込んでいた。
どうも当方の訊ね方と発音が悪かったようだ。
それに加え勘違いも手伝った。
「来いひんねんな」は関西では「来ないんだね」の意味となり、
こちらは念押しをした積もりだった。
しかし娘は「キー、要らんねんな」と聞こえたらしい。
然も「ふん」と肯定したのではなく「ふううぅ~ん」と否定したと言う。
世代の違う異文化コミュニケーションは難儀である。
この勘違いの元は「キー(鍵)」であった。
彼女はこの度引き上げる部屋の合鍵を取りに来たらしいが、当方は預かった覚えはない。
嫁に訊かねば拉致が開かぬと思い、既に高鼾を掻いていたのを無理矢理起こした。
無っ茶不機嫌であったが、不承不承起きてきた。
やはり預かった記憶はないと言う。
まぁ、そういう訳で夜中までわいわいがやがやと
「預けた、預からぬ」と押し問答の水掛け論を繰り返し、
完璧に寝不足となり、えらい迷惑であった。
殺伐とした空気の中、一人蚊帳の外の俺は黙ってテレビニュースを見ていたのだが、
丁度信用金庫への立籠り事件を報道していた。
この瞬間一つのギャグを思い付き、何気に言ったところ、
大いに受けたのと同時に大顰蹙を買ってしまった。
本日はそれをお披露目して締めに致します。
「信用金庫立籠り事件の犯人が病気になったらしいで?」
「えっ、どんな病気?」
「心筋梗塞や」
、、、でした。
m(_ _)m