「明日は明日・今日は今日」 |
日暮れは秋分を過ぎると急ぎ足で忙しなく訪れるようだ。
午後5時を越えた辺りから空の色味を変える。
半時間も立たぬ間にオレンジ色を混じえた鋭い光がガラス屋根に反射し東から突き刺さる。
思わず目を覆う始末だ。
しかし、それも瞬く間に消え去ってしまう。
道行く人々は皆駅に向かう。
家路を急ぐのであろうか、それとも約束でもあるのだろうか。
いそいそした足取りに思えてならない。
日が高い真夏の夕暮れ時には人々の足取りは心なしか、
重く喘いでいるかのように見えた。
暑さがそうさせているに違いない。
午後6時を10分過ぎた今、窓の外に日の光はない。
空は真っ黒だ。
ネオンサインの光が届かないビルの壁面に色はない。
暗い外壁にはブラインドを締めた窓が鈍く澱んだ光を遠慮がちに漏らしている。
午後7時を過ぎると鍵を掛ける。
用心の為にそうしている。
偶に熱心な若いセールスマンが飛び込み営業で訪れる。
息子と同じ位の年齢の若者が多い。
気の毒だとは思うが、鍵を外さず、ドア越しにお断りをする。
「頑張れよ」彼らが去ったあとには、心の中で必ず声掛けをする。
このビルは所謂雑居ビルである。
それ故、出入りに関しての徹底した管理はできない。
そう言えば、昔怖い思いをしたことがあった。
午後9時頃にドアをノックする音がした。
「どうぞ」
何気なしに声を出してしまった。
「失礼します」
若い二人連れの男がヌ~ッと入って来た。
「しまった」
その瞬間後悔したが、どうしようもなかった。
一人は日本人。
「・・・というボランティア団体の者です」
「恵まれないアフリカの人々の為にご寄付をお願いに廻っております」
笑みを浮かべながら丁寧な口調で言う。
もう一人は身長2メートル近い黒人の大男。
敵意は何も感じない。
ニコニコと笑っているだけ。
これには参った。
が、この手の寄付には絶対に応じない。
そう決めているが、結構勇気がいる。
丁寧にお断りをして、お引取りを願った。
幸いにも、彼等は何事もなく引き上げて行った。
正直、床にへたり込みそうな気分であった。
それ以後、夜の執務ではドアの鍵を掛ける習慣にしている。
昨日嫁と買い物に行った。
幸いにも肉の特売日であったのでステーキを所望した。
カナダ産のステーキ肉の許可を得た。
しめしめ、明日はワインじゃ、と心弾ませ、
明朝に準備を整えようと心積もりをした筈であったが、
すっかりと忘れていることに今頃気が付いた。
もう午後7時を過ぎた。
帰り支度をしなければならない。
ワインの準備も要る。
今日は明日のブログの準備も済ませた。
少々の時間経緯への配慮はご勘弁下さい。
今日に出来ることは明日に伸ばすな。
明日に出来ることは今日するな。
何方も一理ある。
自分の都合のいい方を取る。
ヒロさんの大好きな、巨人軍の長嶋さんの口調で・・・
『SECOMしてますか?!』