「川の辺のギターショップ」 |
「修行」編
「何も分からない、、、」
「10年は掛かるで」といい続けられた。
道具はすべて揃えられていた。
煩い事は何も言わない。
「わしを見とったらええ」、「見て覚えたらええ」とだけ言う。
正直、辛かった。
何をしていいのか分からなかった。
教えてくれれば、その通りにする。
ひと月が過ぎた頃、「俺は何をすればいいのですか?」と訊ねた。
爺さんは笑って「あんた、ここへ何をしに来ているんや?」と不思議な答え方をした。
「ギターを作りに来ました」とぶっきら棒に返した。
「そうか、それやったら何故造らん?」、
「造りたかったら造ればええ」
「それだけや」と跳ね返されてしまった。
腹が立った。が、今辞めると言ってしまえば俺の負けだと思い、じっと堪えた。
家に帰り、母親に愚痴った。
「お前、ほんまにアホやなぁ」、
「社長さんの言うてはる意味が分からんのやな?」と母は微笑んだ。
「お前、ギターの造り方を知っているんか?勉強してるんか?」と訊ね返された。
「まだ、よう知らん。俺はそれを勉強しに行っているんやさかいな」と声を張り上げた。
「アホっ!知らんねやったら、本でも買って自分で勉強しっ!」、
「それで、どんどん造ったらええねん」
「それで、分からない処は社長さんに訊いたらええんや」
「要は、自分から進んで始める事や」
「お店は学校と違うで」。
久し振りに聞いた母の説教だった。
つづく