「吉田次郎」 6 |
早速、エム・ファクトリーの三好君に電話を入れた。
「吉田次郎って知ってる?」
「名前は聞いていますが詳しく知らないです」
「何か?」
と訊く。
「近い内に連絡があると思う」
「うちのナイロン絃ギターに取り付けるピックアップの相談をしたいらしいよ」
と答えた。
「木村 大さんのスモールマンに取り付けたことがあるので大丈夫です」
といった。
「いや、それでは満足しないと思う」
「必ずバンドの中で使用するから何か違う発想がいると思う」
と用件は伝えた。
あとはいつもの通り、延々と話をした。
数日後の夜、晩御飯を食べていると電話が入った。
だいたいこの時間にかかってくる電話の大半は
ニューヨークに行っている吉田氏からである。
必ず、「ヒロさん、次郎です」のフレーズから始まる。
向こうは早朝だ。
「今、ジョギングから帰ってきました」という。
彼はひとたび何かを始めるとずーと続ける。
意志が強い。
ギターが上手くなる筈である。
少なくとも俺とは違うなと思う。
自分は意志が弱い、しかし体の中に石は持っている。
時々チクチク痛む。
ひとつ不思議な事と言うか疑問と言うか、
いつも思うことがある。
あれだけ毎日走っているのにどうして彼の腹は引っ込まないのかなと?
脱線した。
話を戻す。
「いやー、あのナイロン絃、無茶苦茶いいですね!」
「スタジオで使って見たけど、凄くよかった」
「絶対にライブで使いたい」
「だからピックアップの件、よろしく頼みます」
「帰ったら直ぐに三好さんへ連絡します。」
と一気に来た。
「やっぱり」と心の中で思いつつ、
「三好君には伝えておいたよ」
「彼は信頼できる」
「期待に応えてくれるよ」」
と答えた。
この章 つづく
あの木村大がエム・ファクトリーと関係を持っていた事。
次郎さんが、あの木村大の設定でも満足しないと予測していた事。
次郎さんが、あの体形で(失礼)ジョギングをされていたって事。
ヒロさんが謙遜を言う人だったって事。
だって、ヒロさん。意志が強くないと語学もそうですし、なにより、これだけ永年にわたる音の追及はできませんよ。
私は意志の弱い凡人なのでサラリーマンをやっているんです。
また、その内ブログネタにしてください。
頭痛持ちですか(笑)?