「震災」 1 |
阪神淡路大震災が発生した。
ゴーという重低音を感じた瞬間の出来事だった。
ドーンと突き上げられ、それから激しく揺れた。
何がなんだかわらからなかった。
嫁さんと子供部屋へ走った。
子供をそばに寄せ、「この揺れでは家は潰れないから大丈夫だ」、
「落ち着け!}と叫んだ。
根拠はなかった。
外に出るとご近所の人たちも出てきた。
くちぐちに「物凄く揺れたね!」という。
そのときは、その程度だと思っていた。
家に戻り、点検したが被害らしい被害はなかった。
実家に電話をした。
両実家とも無事だった。
その後、電話は通じなくなった。
電気、ガスそして水道も止まった。
ラジオはなかった。
情報の採りようもない。
カーラジオの存在を忘れていた。
パニクルと思考回路が働かなくなる。
夜間はろうそく生活。
生活水と食料は近くのスーパーで何とか確保できた。
数日後、電気が通った。
テレビをつけた。
市内の様子が映し出されていた。
「なんというひどい事に!」と思わず叫んだ、
と同時に「ア~、これでは事務所はあかんな!」と妙に納得してしまった。
近所のビルが潰れていた。
その夜、家族会議をした。
息子は13歳、娘は12歳。
話せば理解できる年齢になっていた。
「テレビの映像からして、父さんの事務所のビルも壊れているに違いない。
恐らくギターも壊れていると思う。
仕事の再開は難しいが、
幸いこの家は無事だ。
家を売り、ローンを清算すればいくらかは残る。
実家へ帰り、そこから出直そう!」と宣言した。
みんなコックリとうなずいた。
妙に冷静に覚悟ができた。
若かったからだと思う。
つづく
今では、ポルターガイストより地震の方が大きく揺れるものだと学習しました。
東南海沖地震が起こったら、そんな知識も役には立たないでしょうけど・・・。